

この hope の文字を横目に、
すぐそばの Blue Bottle Coffee のカフェラテを持って
朝の講義に向かう——
Chicagoで過ごしている日常風景です。
この文字を見るたびに、希望を持ち続けることの大切さを思い出させてくれます。
私たちはつい、こう考えてしまいます。
「10年後も20年後も、私は今と同じ価値観で、同じ判断をしているはずだ」と。
しかし、行動科学者シャンカール・ヴェーダンタムは、
それが人間にとって非常に自然で、同時に危うい思い込みであると指摘しています。
彼はこの心理を、「永続性のファンタジー(The Illusion of Permanence)」と呼びました。
私たちは過去を振り返れば、
「昔の自分と今の自分が違う」ことには簡単に気づきます。
ところが未来を考えるとき、
なぜか「少し年を取った今の自分」しか想像できなくなる。
世界が変わることは想像できても、
自分自身が大きく変わる未来は、ほとんど想像しないのです。
変わる自分を前提に、意思決定をするということ
人は、時間とともに確実に変わっていきます。
大切にしたい価値観も、
望む働き方や役割も、
人生に求める「質」も。
それにもかかわらず、私たちはしばしば、
「今の自分」の判断を、そのまま未来に引き継がせてしまいます。
人間もまた、
身体的にも心理的にも、
新しい層を重ねながら生きている存在です。
だからこそ、リーダーに求められるのは、
「今の正解を固定すること」ではありません。
変わっていく自分や組織が、
これからも選び直せるように、
余白を残した意思決定をすること。
それが、成熟したリーダーシップの前提になります。
未来の自分を率いるという発想
この話が示唆しているのは、
「未来を正確に予測しよう」ということではありません。
むしろ大切なのは、
未来の自分は、今とは違う存在になる
という前提で、選択をすることです。
ヴェーダンタムは、そのための実践として、
次の3つを挙げています。
好奇心を持ち続けること
未来の自分が選べる可能性を、今のうちから広げておく。
謙虚さを持つこと
反対意見の中に、
「未来の自分」が含まれているかもしれないと想像する。
勇気を持つこと
「今の自分にはできない」ことと、
「将来の自分にもできない」ことを混同しない。
これらは、スキルというよりも、
未来の自分を率いるための態度だと言えるでしょう。
未来の可能性を広げるために
そのために、私自身がこの数年間のワークで
特に大切にしているのは、
未来の自分を、現在の延長線上で考えないことです。
人はどうしても、
「今の自分が少し成長した姿」を
未来として想像してしまいます。
しかし、それでは可能性は、
今の枠を大きく超えていきません。
むしろ重要なのは、
- 自分の中にある思考の枠をどこまで広げられるか
- 自分の前提を疑い、無意識のBias(固定概念)に気づき、それを壊して次に進む勇気を持てるか
- 今の自分では想像しきれない大きく高い未来に、視線を向けられるか
という点です。
人は、より大きな未来を描けたときほど、
そこに向かうための目標の質が変わり、
自然と視座が高くなっていきます。
こうしたアプローチは、
世界のトップビジネススクールにおける
リーダーシップ開発プログラムでも、数多く紹介されています。
そこでは、下記のようなDesign your life のアプローチによって
複数の視点から未来を描き議論をしていくと、非常に盛り上がり、
一人では辿り着けない未来のヴィジョンが見えてくることも多々あります。
- Current Best-Case Scenario(今の延長線での最良シナリオ)
- Back-Up Plan(現実的な代替プラン)
- Wildcard Plan(心が最も動く大胆なプラン)
リーダーシップ開発の出発点
私にとってリーダーシップ開発とは、
理論としての知識を身につけることにとどまりません。
それらを知恵として日常の意思決定に活かしていくために、
まず必要なのは、
リーダー自身の可能性を広げることだと考えています。
従来の思い込みの枠の外へ飛び出し、
視座を高く、深く、そして広く整え、
その上で、志をあらためて驚くほど高く引き上げていくこと。
そこから、本当のリーダーシップの旅ははじまるのではないでしょうか。