

リーダーとしての自分を問い直す旅
“What matters most to you, and why?”
これはスタンフォード大学MBAの出願エッセイで必ず問われる有名な設問です。
この1行の問いが生み出す偉大さを、今ほどに感じることはありません。
日頃からリーダーシップ開発の現場で、
“What matters most to you, and why?”
とリーダーたちに問い続けてきた私自身が、
MBA受験プロセスに踏み出した瞬間から、数ヶ月にわたり思わぬほどに苦戦することになるのです。
しかし、追い込まれるほどに向き合って初めて見えてきたのは、
“今の漠然とした自分の軸” ではなく、
“これからの未来をかたちづくる力強い自分のテーマ” だったのです。
TOC|目次
47カ国の仲間との学びがスタート
今年の秋から、アメリカのビジネススクールでの学びが始まりました。
同級生は、47カ国から集まった200名弱。
多様な文化・価値観・経験をもつ仲間との議論は、毎回、刺激と驚きにあふれ、
自身の価値観や前提を、大きく揺さぶられる新鮮な日々を過ごしています。
学生生活の様子について、ほんの一部ですが、こちらのKick off weekの記事にご紹介いただいています。
なぜ海外にまで出向いて?
MBAは日本にも素晴らしいプログラムが数多くあります。
その上で私が海外で学ぶことを望んだのは、
“経営学を学びたいから” という動機以上に、
人と組織の探究を続けるために必要な国際感覚が、
自分にはまだ不足しているという危機感 があったためです。
ここ数年、研究者として学会・国際会議などで海外の方々との交流が増えてきたことに加え、
教員として担当する大学院の教室では日本語クラスでも外国籍学生が3割、
英語クラスはほぼ全員が外国籍です。
さらには、企業のコンサルティングの現場でも、海外出身の社員が確実に増えています。
こうした環境に身を置くほどに、私は幾度となく、国際感覚の欠如による課題に直面してきました。
日本の人口構造や労働市場の変化を考えても、
今後の人と組織の領域では、
国際感覚を備えたうえで世界を俯瞰し、人を理解し、組織を捉える力 がますます重要になるという確信があります。
そのとき鍵になるのは、英語力そのものではありません。
世界の価値観や思考プロトコルを理解する力
国際感覚を理解した上でのコミュニケーションと行動
もしそれを身につけなければ、
今後の自分の貢献は限定されてしまう——
そんな日々の焦燥感が、私を海外への挑戦へと駆り立てました。
世界のリーダーが集まる場所を求めて
リーダーのモチベーションや意味、そしてより寛大で創造的な人生を生きるための洞察。
この数年、私はワークエンゲージメント、Well-being、Creativity、アントレプレナーシップ、革新的行動など、
多様なテーマを探究してきました。
しかし、その広がりを支える“軸”として追求し続けているテーマは、
「リーダーのアイデンティティ」 です。
組織の変革は、制度や仕組みも重要ですが、
最も影響力の大きいリーダー自身の内面の変革から始まると考えています。
その起点となるのがリーダーアイデンティティであり、
これは時代を超えて向き合い続けるべきテーマだと感じています。
そして、この普遍的なテーマを深めるためには、
より広い人間理解と国際的な視野が欠かせない。
そのためには、世界中のリーダーが集まり、価値観が交差する環境に身を置いて学ぶ必要がある——
そう自然に考えるようになりました。
経営学を学ぶ必要性を感じた理由
では、世界のリーダーが集まる場所とはと考えると、それは自然と経営学にたどり着きます。
経営学は、私自身が研究や実務でも身近な領域であり、まだまだ自身の伸び代が大きい分野でもあります。
日々そのようなことを思い続けながら、次第に経営学を海外で学びたいと感じるようになりました。
その理由は主に3つあります。
① 経営は世界のリーダーが共有する「思考の共通基盤」だから
国際感覚の必要性を痛感するようになった一方で、
世界のリーダーたちが日々どのように考え、判断し、組織を導いているのかを理解するには、
彼らが使っている“思考の共通言語”を学ぶ必要があると感じるようになりました。
その基盤となるのが経営学です。
ファイナンス、戦略、組織行動、マーケティング——
これらは単なる専門分野ではなく、
多様な文化のリーダーが意思決定を行う際の「前提」や「ロジック」そのものです。
人と組織を探究し続ける私にとって、
この思考基盤を世界の最前線で体系的に学び直すことは、
視野を広げ、研究と実務の双方で貢献できる領域を飛躍的に広げる道だと確信しました。
② 人と組織を“全体最適”で捉えるため
これは、私の原点であるシステムデザイン・マネジメント研究科での学びの影響が大きいのですが、
人と組織を探究するためには、
経営全体を “全体最適の視点で” 捉える力が不可欠 だと感じるようになりました。
人的資本だけを専門的に深めても十分ではなく、
ファイナンス、マーケティング、経済学、経営戦略など、
企業価値を生み出す仕組みそのものを統合して理解する必要があると痛感したのです。
③ 人的資本を価値創造につなげるため
サステナビリティ委員として「ESG投資からインパクト投資へ」という講座を受講した際、
専門家から繰り返し語られたのが、
「人的資本をはじめとする非財務資本を、どう企業価値に接続するか」
というテーマでした。
その瞬間、私の中でこれまでの点と点がすべてつながりました。
人的資本経営を探究するのであれば、
これらの基盤となるファイナンスや統計・経済学を、
改めてしっかりと学び直す必要がある——
そう強く感じたのです。
なぜ Chicago Booth だったのか
世界中にある素晴らしい大学の中から最終的にChicago Boothを選んだのは、
アドミッションとの対話を通して、
「ここなら、自分が探究したいことを一番深く学べる」
と確信できたからです。
Boothは世界トップクラスのファイナンスに加え、
人間行動の原理原則を重視する理論ベースのアプローチ、
そしてデータ分析の強さを併せ持っています。
アメリカのMBAにはケーススタディ中心の学校も多いですが、
私は少し懐疑的でした。
文化背景が異なる国の過去事例が、
日本の組織にそのまま当てはまるとは限らないからです。
むしろ、急速に変化する環境下では、
・組織行動の本質をとらえる理論
・データに基づく判断基準
・財務・戦略の根底にある原理
これらを深く理解することが、
長期的に最も力になると感じています。
その意味でも、Boothは私にとって最適な場所でした。
自分の枠組みをアンインストールし続ける
変わらざるをえない環境に身を置くと、
心身ともに追い込まれながらも、
“生き残るために変化する力” が呼び起こされます。
テクノロジーの進化に伴い、変化し続ける時代に、
最大の敵は、昨日の自分です。
常にこれまでの前提を疑い、ときには積み重ねてきたものも潔く手放し、
軽やかに、身軽になって、行動し続けていきたいと、日々自身に喝を入れています。
また、挑戦のタイミングは、人によってまったく違うものであり、
何かを急ぐ必要も、誰かと比較する必要もありません。
可能性を閉じてしまうのは、
年齢でも、置かれた状況でも、これまでの経歴でもなく、
“未来を現在の延長線だけで考えてしまうこと” かもしれません。
あたらしい旅は、今日からはじまるのです、
自分の未来を、信じることさえできれば。
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