個と組織のWell-being

組織と個人の関係をReDesignする チームマネジメントとリーダーシップ”というイベントを実施させていただきました。

メンバーひとりひとりの活性化が組織全体を活性化させる。組織と個人が依存関係ではなく並列関係でインタラクションする。Atomic Team Design Workshop。慶應SDMの草野先生とレッドジャーニー代表の市谷さん、クリエイティビティあふれるお二人と新しい視点から組織を考える素敵な機会をいただきましたので、一部を備忘録として記したいと思います。

自由で柔軟に働きながら、多様な選択肢をもたらせてくれる時代の到来。私たちのWell-Beingは高まっていくのか?”という問いかけからスタート。※健康とは身体的,精神的,社会的に完全に良好な状態(well-being):世界保健機関WHO(1948)

well-being について、幸福度と関連が高い6項目(World Happiness Report 2020)のうち、 一人当たりのGDP、人生の自由度、他者への寛容さの3つの要素から紐といて考察していきたい思います。
ちなみに残りの3つの要素は、社会的支援・ 健康寿命・政府や国への信頼度である( World Happiness Report 2020,chapter2 )。 

まずは、 一人当たりのGDP から。

図1 Economic growth and SWB in japan ※1

図1は、戦後日本における「一人当たりGDP」と「生活満足度」の推移である。この図から、一人当たりのGDP:生活が豊かになったけれど、生活の満足度は変わらないことがうかがえる。
SWBとは、 Subjective Well-being のことであり、主観的幸福感あるいは主観的健康感である( 伊藤・相良・池田・川浦, 2003)※2 。

続いて、 人生の自由度について

図2 Life expectancy,1663 to 2019 ※3

図2によると、歴史の流れとともに、私たち人類は、自由な時間を手にしていることが良くわかる。では、自由な時間が増えた私たちは、どのように時間を使っているのだろうか。

アラン・クルーガー教授(プリンストン大学、経済学者)は、 40年間(1965-2005年)にわたるデータを分析すると、男性は、仕事をする時間、女性は家事をする時間が軽減される。一方で、人間は豊かな時間が増えたにもかかわらず、その自由な時間は、ただなんとなくすごしてしまう時間になっていたという結果であった。

以上の図1から3のことから、これからの私たちに求められるキーワードとして、

Self Development

     が必要ではないか。それはたとえば…
     〇 自分がどういう人生を生きたいのかを問い続ける
     〇 自分のもつ資質に光を当てて育てていく
     〇 長きにわたり、自分を動機付けていく
     〇 常に進化し続けていくことを楽しむ

3つ目の 幸福度と関連が高い 要素である他者への寛容さについて

図4 Ranking of Happiness: 2017-19 ※5

日本人の私たちが着目したいことは、日本の幸福度世界ランキングである。
2017年51位、2018年54位、2019年58位、2020年62位。と年々下がっているのです。
その一つの要因として考えられることは、図4にあるように、”他者への寛容さ”が日本は低いのです。

以上の図4のことから、これからの私たちに求められるキーワードとして

Generosity

     が必要ではないか。それはたとえば…
     〇 周囲の人の価値観を知り、大切にする
     〇 周囲の人に寛容な気持ちをもつこと
     〇 周囲の人の才能を発見し互いに育み、co-designしていく
     〇 他者への寛容さを促すために、まずは、自分自身にも寛容になる

組織と個人の関係をRedesignしていく中で、まずは、ひとり一人が、 Self Development を真剣に考え実行し続けること、そして同時に、他者への Generosity も忘れてはならない。
それが実現した組織は、より自律的で、継続的なイノベーションを起こしていくことができると考えられる。簡単なことではないけれど、組織の変革は、そこに集まるひとり一人からはじまるからこそ、各々が自問自答し、他者を理解するような機会を今後も設けていきたいと考えている。

Source:

※1:Diener, Ed, and Robert Biswas-Diener. “Will money increase subjective well-being?.” Social indicators research 57.2 (2002): 119-169.

※2:伊藤裕子, 相良順子, 池田政子, & 川浦康至. (2003). 主観的幸福感尺度の作成と信頼性・妥当性の検討. 心理学研究74(3), 276-281.

※3:James C. Riley (2005) – Estimates of Regional and Global Life Expectancy, 1800–2001. Issue Population and Development Review. Population and Development Review. Volume 31, Issue 3, pages 537–543, September 2005., Zijdeman, Richard; Ribeira da Silva, Filipa, 2015, “Life Expectancy at Birth (Total)”, http://hdl.handle.net/10622/LKYT53, IISH Dataverse, V1, and UN Population Division (2019)
Note: Shown is period life expectancy at birth, the average number of years a newborn would live if the pattern of mortality in the given year were to stay the same throughout its life. https://ourworldindata.org/life-expectancy

※4:Krueger, Alan B. “Are we having more fun yet? Categorizing and evaluating changes in time allocation.” Brookings Papers on Economic Activity 2007.2 (2007): 193-215.

※5:World Happiness Report 2020, https://happiness-report.s3.amazonaws.com/2020/WHR20_Ch2_Statistical_Appendix.pdf