DESIGN Conference 2020

デザインの学際的な側面から最先端の知見を共有するために研究者や実践者が世界中から集まる国際会議DESIGNに参加した際のトピックです。

DESIGN2020のテーマは、哲学、方法論、研究理論など多岐にわたるのですが、その中でも下記のテーマを中心に参加しました。
“DESIGN EDUCATION”
“HUMAN BEHAVIOUR IN DESIGN”
“DESIGN THEORY AND RESEARCH METHODS”
“DESIGN CREATIVITY”
“DESIGN FOR SUSTAINABILITY”

全体の潮流としては、”DESIGN FOR SUSTAINABILITY”、”DESIGN FOR HEALTHCARE”と社会的な課題解決にどのようにデザインを役立てられるのかということのように感じます。

その中から特に印象的なものを紹介します

WORKSHOP: CREATIVITY-ENHANCING PHYSICAL WORK ENVIRONMENTS
Chair: Katja Thoring

創造性が広がる働く空間をどのように構築していくのかということについてのワークショップです。
最初にいくつかの創造性が広がるオフィスの事例(ZAHA HADID:INNOVATION TOWER PORY-U HONG KONG, FRANK GEHRY:PAPERBACK BUILDING UNIVERSITY OF SYDNEY, GOOGLE OFFICE:FANCY OFFICE INTERIOR)

Katja Thoring教授が、研究して提案された”ワークスペースの種類とその資質の異なるタイプを分類する創造的なワークスペースの類型論”と”企業文化分析のためのキャンバス”が非常に興味深い。漠然と創造性が広がるworkspaceと言われても、ゼロから考えることは専門家ではないと難しい。これらのツールの利点は、専門家がいなくてもある程度、組織の中で自分たちにとっての創造性的なワークスペースとは何かを考えられるところにある。

企業文化とワークスペースデザインは、互いに影響を与えます。創造的な作業環境の再設計のために、このようなキャンバスを使用して企業文化とワークスペースデザインを全体俯瞰し、戦略的に分析することが有効であると思います。
キャンバスとは、1枚の紙の上であるテーマについてガイディングを促すツールですが、世界で認知がある一つのサンプルとして、ビジネスモデルキャンバス(BMC)(Osterwalder, 2004)があります。BMCは、ユーザーが組織のビジネスモデルを理解するのに有効なものですが、キャンバスの良いところは、テーマに関係する要素と潜在的な相互関係や価値創造への影響を可視化するのに役立つことです (Joyce & Paquin, 2016)。

いよいよグループワーク実施。オフィスの写真を見ながら、そこに創造性につながる理論を掛け合わせて、創造性が広がる働く空間をどのようにつくるのかについてチームでオンラインホワイトボードmiroを使用し、ディスカッションしていきます。
※創造性につながる11の理論:Priming,Preparation,Serendipity,Incubation,Synthesis,Illumination,Fluency,Flexibility,Elaboration,Verification,Fixation
この理論はすべて先行研究に基づいた理論のため、キーワードを念頭に置くだけでも空間のみならず、仕事そのものにも創造性を取り入れるヒントになると感じます。

私たちのチームの議論の様子。やはりこのところあらゆる国際会議では、miroを使用することが主流になっているように感じています。デザインの学会だからということもありますが、miro上のデザインも非常に美しくわかりやすいのです。

国際カンファレンスに参加することの良さは、同じ関心テーマのある世界中の研究者や実践者たちと議論を重ねながら、最先端の知見や業界の潮流に触れながら、自分の研究や仕事を見つめなおす機会になることです。すべてを吸収することは難しいのですが、全体潮流をつかんだうえで、何か一つでも関心テーマとリンクする要素を知ることができることだけで目の前の世界が広がります。